小説的

ゆ〜っくり。続編が書かれます。
書き足されたその時は、やさい通信にご案内します。石々混交です。
ノッた時に書きます。すみません。m( _ _ )m



 

■蜘蛛 ※迷走中です(^^ゞ

緑の濃い街路。
そこに面して歯科医院がある。
3年ぶりにこの医院を訪れた。
歯の詰め物がとれてしまったのだ。

待合室の本棚には、たくさんの雑誌とコミックスがある。
コミックスには、少年コミック、青年コミックと少女コミックが程よく処方されていて、
何を読もうか迷う。短時間に楽しめるものは何かと迷うのである。
『クレヨンしんちゃん』が目に入る。
いやいや、診察の直前にギャグ漫画はマズイ。
ワタシは、思い出し笑いをしてしまうのだ。
それもかなり笑ってしまうのである。
笑い出したら止まらない。
それを踏まえた上で、何を読もうか。
今度は、”どおくまん”の著書が目に入る。
しかも『熱笑!花沢高校』である。
マズイ。この本を見つけるだけでマズイ。
昔、既に読んでいて、このコミックスの存在を再確認しただけでマズイ状況である。

全然知らない作家のSF小説を取って読み始めた。
”麻酔”が欲しかったのと、なんとなく読みたかったから読み始めた。
しかし、3ページとたたないうちに、
歯科助手のおんなのコが、ドアを開けてワタシの名前を呼んだ。

診察室に入ると、診察用の椅子が3基窓に向かって並んでいる。
奥の二つは既に先客がいて、一番奥に座っている人は医師に治療を受けている最中らしい。
私は、残った椅子に座っていてくださいと歯科助手さんに伝えられ、そこに座った。
隣の青年も治療を待っているところらしい。まだ私の治療がはじまるまで時間がありそうだ。

席の前面にある出窓に植木鉢が二つあった。以前来た時と同じ植木蜂だ。
この鉢には視線がある。どこかの国の民芸品だろう、
木を一刀彫りで削り出した顔がついている。オセアニアの優しい表情だ。
それらには、ネギのように痩せたユッカが植えてある。
まだ苗木のようで、つい最近植えたものらしい。
以前来たときはこの鉢に何が植えてあったのだろう?
何も植えてなかったのだろうか?
それともその時、草木をみる余裕が自分になかったのだろうか?

大きな椅子に身を預けているからか、眠くなる。小さなあくびが出た。
このところ睡眠時間が足りていないせいもあるが、
大きな椅子に待たされる状態というのは、今は動かなくてもいいのだと、
自分に代わって椅子が世界にいいわけしてくれているようで、安堵してしまうからだろう。
それに甘えて、眠くなるのだろう。

ふと気がつくと、今日はもうひとつ視線があった。
ごく小さな視線が宙にあった。それは蜘蛛だった。

ワタシは、まだリクライニングを倒されていない状態で座っていた。
蜘蛛は、そのワタシの真正面50センチぐらいのところに、すすすーっと降りてきた。
口内照明器の細いアームから糸で懸垂していた。
左にこの照明器具の支柱があって、その先に間接がある。
その間接から照明の腕が右伸び、またその終わりに関節があって、
次の腕はもとの支柱のある左に戻っている。そしてそこに口腔内灯がついている。
ワタシの顔の前方上空に、5センチの細腕がプロレスでいうエルボーをしているわけである。
蜘蛛は、その腕からぶら下がっていた。

隣の青年の治療が始まったようだ。
ハンドピースの可聴域ぎりぎり回転音が静かな診察室に響く。
この音は、昔からワタシの毛穴や尿道や肛門を硬く閉じさせる。
しかし、歯の悲しい切削音が重なって聞こえはじめると、今度は、
それらの穴は、ぽっかりと開きはじめるのだった。
そしてきっとワタシは、口腔内に大量に唾液を溜めてしまう。
歯科医は、え?っという反応をして、バキュームノズルでズルズルと唾液を吸い上げる。
なんで、こんなに唾液を出すのだろうという「え?」なのである。
その時点で、口をはじめ全ての穴は完全にあきらめてしまっているだろう。
でも、もうひとりの自分は至福を感じ、どこまでも粘膜と粘液を曝そうと切望している。
いっそのこと固定された椅子の上で裏返しにされたい。
なにも隠せない状態になりたいと。

となりの青年はどうなのだろうか?
サディストの咆哮が続いている。
ワタシの聴覚は、この音に支配されていたが、
まだ私は蜘蛛を見ていた。


続く
 
 
 



 
 
 
 

Copyright Yoko・h


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